藤本青果
Net-Working パーソン to パーソン

(Vol.009)
北海道のナノ・テクノロジーの草分け、末岡和久教授インタビュー
「ナノ・テクってナンなの?!」

 
 

 原子一個の大きさのレベルの物を作るというナノ・テクノロジー。最近、マスコミを賑わす言葉となっていますが、イマイチなんのことだか分かりません。そこで、編集部では編集長と旧知の仲の北海道大学の工学博士末岡教授にざっくばらんに聞いてみることにしました。

 

 

編集部:一口で言うと、「ナノ・テクロノジー」はどんなものなのでしょうか?

末岡教授:ナノ・テクは、まず「ナノ」という言葉の意味をご理解いただかなくてはなりません。「ナノ」とは物の大きさを表しています。メートル、ミリメートル、マイクロメートル、次が「ナノ」です。ナノは1万分の1ミリから10万分の1ミリのサイズを持った構造とか機能を活用したものをナノ・テクロノジーといいます。LSIとかCCDなどのエレクトロニック・デバイスは物を小さくして、ミリメートル、マイクロメートル、ナノメートルという大きさに小さくしていくナノ・テクノロジーですが、もっと小さい原子や分子を組み上げていきながらもう少し大きい新しいものを作る。これがナノ・テクです。 

 

編集部:ナノ・テクによって私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?

末岡教授:ナノ・テクが目指しているものは多岐多様に渡っています。エレクトロニクスが生活において色々な部分に現れているのと同じです。ナノ・テクは今までにない機能を沢山作ろうと考えていますので、もっと小さなエレクトロニクスのデバイスもありますし、もっと新しい機能を持った構造、たとえばドラッグ・デリバリー・システムという、体の中に薬品を特定の部分に送り込む機能や構造を持ったデバイスとかロボットとかができるようになりますから、ちまたでいわれる安心とか安全とか、今までになかった形で私たちの生活に潤いや安心を与えることが期待できると思います。 


編集部:一口にナノテクといっても実に範囲が広いのですが、最も有望な分野は何でしょうか?

末岡教授:ナノ・テクの分野は本当に広いですね。ひとつは医療系のドラッグ・デリバリ・システムやセンサーがあります。センサーは私たちの研究室では、色々なウィルスや感染症を検出する小さなデバイス(センサー)を作ることをやっています。こういう領域では、いかに病気を克服するとか、病気に対する危険性をどうやって回避するかといったことにナノ・テクは使えます。色々な新しい材料も出てきますから、非常に硬い材料、硬い構造のもの、非常に薄くて硬い材料ができる。たとえば、軽い車ができるとか、より強いビルができるとか、そういったこともできます。


 編集部:ナノテク機器の製造過程で生まれるナノテク廃棄物が、削りカスのようなものが排気ガスのように人間の体に悪影響を与える可能性がいわれていますが本当でしょうか?

 
   

末岡教授:ナノ・テク廃棄物は削りカスが出るわけではありません。大きなものから削っていくナノ・テクもありますが、小さなものから組み上げて大きくしていくナノ・テクもありますので、削りながら何かを作るテクノロジーでは削ったカスも出てくるのですが、削ったカスはもともと非常に綺麗な材料でできているので、それを再利用するのは簡単です。小さいものから組み上げていく過程で捨てるものが出てくることはあまりありません。ただ、その過程で洗浄をしたり、組み上げる時に接着したり、化学薬品を使いますので、そういった廃棄物はありますが再利用をどうするかを設計することで避けることができます。問題は、ナノ・テクで消費電力の小さいもの、環境にやさしいものを作るのですが、作る過程ではかなりの動力を使います。どれくらいエネルギーを使うかということの方が非常に問題で、そこをどうやって設計していくか、どうやって作っていくかをちゃんと見直さないと、できたものが環境にやさしくても、できる過程で使ったエネルギーは環境にものすごく影響を与える、環境を傷めながらエネルギーを使っていることもありますから、その辺はよく考えないといけないと思います。



編集部:ナノテクが生んだ原子レベルのサイズのロボットを、たとえばテロリストが悪用するなどして世界中で騒ぎを起こすような危険性はないのでしょうか?

末岡教授:LSIのようなものをテロリストのような人たちが作れるかというと、非常に難しいです。ハイテク製品を材料だけでなくシステムまで組み上げるのはハイテクのインフラがないとできないので、ナノテクのロボットも作るのは非常に労力のかかる話です。ですから、そういう人たちが作るのは大変です。だから、作ったものを持っていて使うことはあり得ると思います。それをどうやって管理するかが問題です。それよりはナノ・テクは逆にテロリストからどうやって守るかに使えます。たとえば、センサーはバイオ・テロや化学的なテロを逸早く検出する、微小なウィルスを逸早く検出するとか、非常に小さいですからセンサーをその辺にばら撒いて、異常があったところを検出するとか、そういったところに活用されると思います。

 

特別編:

活字にしなかった末岡教授からのナノのお話を映像でご覧いただけます。

 WMP 256K500K
 QT 256K500K

先生から最後にもう一言

 


  いま私の研究室では大きくは二つの研究をやっていまして、ひとつは原子レベルで原子のひとつひとつを観察してそれを組み立てるための装置の開発をしています。もうひとつは、ナノメートルの構造を持った電子デバイスの構造を作ろうとしています。これは私と私の恩師との共同研究として北大で展開しているのですが、ウィルスを非常に高感度で高速に検出をするセンサーを作っています。いま、北大で「人獣共通感染プロジェクト」といって人と動物の両方がかかる、たとえばインフルエンザのようなウィルスを検出する逸早く行うシステムの開発を進めていまして、原理的に可能だということが実験で検証が終わった段階です。これはインフルエンザだけではなく色々なウィルス検出に仕えますし、あるいは肝炎など人間の血液の検査にも応用できると考えていまして、それを組み上げてシステム化した上で提供できるように研究を進めているところです。

 

BACK TO INDEX PAGE TOP